何が起きたか

Carbon Pulseは2026年9月25日、米国に本拠を置く資産運用会社JPモルガン・ナチュラルキャピタルと、パラグアイ政府が、同国の持続可能な林業を支える2億ドルの投資を発表したと報じた。今週開催されたパラグアイ投資フォーラムの場で公表されたもので、炭素市場の活用も枠組みに含まれるとされる。

報道によれば、この取り組みは商業用の植林地を整備すること、在来林の再生を進めること、そして木材生産や炭素クレジットといった収益源を検討することを柱に据えている。同社の最高経営責任者は、持続可能な資源管理と農村開発に根ざした長期的な林業基盤を築く機会だと説明したと伝えられる。パラグアイのペニャ大統領は、大都市以外の地域に良質な機会を生み出す姿勢の表れだと述べたという。

事業はパラグアイの現地組織Grupo Robinsonとの提携で組み立てられ、同組織が地域の知見と生産面の専門性を担う。資産運用側の発表資料では、国際的な資本と現地の能力、自然資源の持続的な利用を組み合わせることで、地方での雇用創出や地域社会の強化につながることが見込まれるとされている。資金の投入は来年の早い時期に始まる予定と報じられた。

背景として、同社が今月、Campbell Globalから現在の名称へ改称した経緯が紹介されている。Campbell Globalは2021年にJPモルガン・アセット・マネジメントが買収した運用会社で、2025年末時点でおよそ110億ドルの資産を扱い、世界で60万ヘクタールを超える森林を管理していたという。2025年春には、林業と気候に関するファンドの第2号を15億ドルの調達で締め切り、当初の目標額を上回ったとされる。同ファンドは木材生産に加え、生物多様性の改善や炭素の吸収を狙う自然基盤の解決策を支えると説明していた。

なぜ重要か

第一に、機関投資家の資金が森林を「資産クラス」として扱う流れが、南米の新たな国へ広がった事例である点が挙げられる。従来、こうした林業ファンドは北米やオセアニアの用材林を中心に運用されてきた経緯がある。パラグアイのような案件が加わることは、投資先の分散と同時に、土地の権利関係や現地の規制への対応が問われる局面が増えることを意味する。

第二に、収益の組み立て方である。木材の販売と炭素クレジットの発行を併存させる設計は、価格変動の異なる二つの収入源を組み合わせる狙いがあると読める。一方で、伐採を前提とする商業林と、炭素の貯留を長期に保つことを求められるクレジットとは、時間軸の扱いが異なる。両者をどう切り分けるかは、案件の説明において重要な論点になり得る。

第三に、在来林の再生が明示された点である。単一樹種の植林だけでなく、自然林の回復を含めた構成は、近年の生物多様性をめぐる要請を意識したものと解釈できる。ただし現時点で公表されているのは構想の骨格までで、対象面積、樹種、どの認証制度に基づくクレジットを想定するかといった具体は本報道からは確認できない。

日本への含意

国内では、森林・林業基本計画のもとで再造林や木材利用の拡大が課題とされ、J-クレジット制度にも森林管理に関する方法論が置かれている。一方で、林業への民間資金の導入は緒に就いた段階で、投資として成り立つ収益構造をどう描くかは共通の課題である。今回の案件が、木材と炭素という二つの収入をどのような比率と期間で組み合わせるのかは、国内で同種の枠組みを検討する際の参考材料になると考えられる。

企業の担当者にとっては、海外の森林案件から生まれるクレジットを調達する場合の確認事項が挙げられる。植林による吸収なのか、既存林の保全による回避なのか、伐採後の炭素の行方がどう扱われるのか、地域住民との合意形成がどの段階で行われているのかは、区別して把握しておきたい点である。

自治体や林業の関係者にとっては、資金の出し手が求める情報の水準という観点が示唆に富む。面積や蓄積量の把握、施業履歴の記録、権利関係の整理といった基礎的なデータが、外部資金を受け入れる際の前提となる。現段階で結論を急ぐ必要はなく、資金投入が始まった後の実務的な進捗や、対象地域での制度整備の状況を順に追うのが妥当と考えられる。

用語解説: 自然資本(ナチュラルキャピタル)

森林、土壌、水、漁業資源、生物多様性といった自然環境を、経済活動の基盤となる資本の一種としてとらえる考え方を指す。人工物である「人工資本」や人の技能を指す「人的資本」と並ぶ概念として整理され、そこから継続的に得られる木材、水、気候の調節、土壌の保全などの便益は生態系サービスと呼ばれる。近年は、自然資本の劣化が企業の事業継続にとってのリスクであり、その維持や回復が投資の対象になり得るという認識が広がり、金融機関が林地や農地を運用対象に組み入れる動きが増えている。資産運用の文脈では、木材販売のような直接的な収入に加え、炭素クレジットや生物多様性に関する成果の取引が、収益源として検討される場合がある。一方で、自然の価値をどう測り、誰に帰属させるかについては国際的な議論が続いており、測定手法や情報開示の枠組みの整備が進められている段階といえる。